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さて、あの謎の痛みを味わい続けてから、一体どれほどの時間がたったのだろうか。
睡蓮「はぁ…、はぁ…」
未だに続く激痛を堪えながら、自分が今いる場所の確認を行う。
といっても、目はまだ開けられず体はこの激痛に慣れるまでもう少し時間がかかるため、今は背中から感じる感覚と周囲の音、匂いで場所を予想するしか出来ないが。
まずは背中の感覚からすると、今俺が寝ているのは草の上。
向こうで濡れたのかは分からないが、背中は濡れており、髪は腕にまで張り付いて不快に感じる。
次に周囲の音と匂いだが、草木の揺れる音と芳香を感じる。
睡蓮「…ここ、は…森…?」
何とか出た声で発したその言葉を答えるものは誰もいない。
当たり前だろう、なぜならここは"彼"と"彼女"の"一人"しかいないのだから。
痛みにも慣れ、体が動けるようになったのはそれから数時間ぐらい先のこと…
幸いにも、獣にも襲われることなく(遠くで女性の叫び声と獣の鳴き声が聞こえたが…)、無事体力も回復したのだが…
その頃には森は既に闇に覆われ、何も見えない状況になっていた。
睡蓮「さて、ようやくまともに動けるようにはなったが…」
緋睡「うぅ…まだ体が痛いです…。筋肉痛ってこんな感じなんでしょうか?」
そんな中、独り言のような会話をしながら平然と木から木へと飛び移って移動する一人の影。
…まあ、本文中に自己紹介とか面倒なので分かりやすく説明すると…
この主人公、二つの人格を同時に表に出せる二重人格みたいなものなんですよね。
詳細は次章にでも説明します。
…それにしても、人間技とは思えない身体能力ですね。
■=■=■
緋睡「ところで睡蓮、これからどうするんですか?見た感じここは日本…いえ、地球ではないようですが。」
睡蓮「ああそれは理解している。」
ここが地球ではないどこか違う世界だということを何故か理解している。
「しかも、【黒】とか言う訳の分からない【力】まで手に入れてしまったらしい。」
…まったく、これじゃ昔、参考資料として読んだ異世界転生モノの本と同じじゃないか…。
睡蓮「…一応目を通しておいて良かった。」
資料によれば、このまま森に滞在すれば盗賊に襲われている貴族が現れる…というのがテンプレと書いてあったからな。
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