第1章

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その記念すべき日、僕は自分よりもでかいんじゃないかってなスーツケースを転がしながら、近くのヘブンイレブンに行った。ヘブンの店長の増田さんは天使のようないつもの笑顔で、僕を迎えてくれた。 「やあ、いらっしゃい!久しぶりだね!」 「こんにちわ、増田さん!久しぶり」 「スーツケースなんて持って、今日はどこかに行くの?」 「ちょっと遠いところに行きます。ところで、線香、ありますか?」 「そうか、もうすぐお盆だもんね!そういう先祖を大切にする気持ち、おじさん、感心しちゃうなー」 そう言う増田さんに向かって、ここぞとばかりに僕は言った。 「いえいえ、これは僕の葬式用の線香なんです!」 そう言うと、増田さんの笑顔は急に不安なものになった。まるで、寂しい夏の夕立みたいにね。僕は気にせず、続けた。
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