第1章

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「つまりね、僕は死んだんです。だから、これから葬式をしようと思って。増田さんも参列していただけますか?」 言っちゃった。 増田さんの顔がさらに変化していくのを見て、僕は満足した。でも、このおっさんはしばらくして、ある事を思い出したんだな。 多分、ヘブンのマニュアル本とかに書いてあるんだろうけど、「お客様は神様です」ってやつをね。 「そうかー、じゃあ、おじさんも参列しようかな!でも、今日も神様がたくさん来るから、忙しいと思うよ。どうだろうなー。ほら、もう次の神様が来たぞ!仕事!仕事!」 そう言って、レジの方に行ってしまった。まったく、尊敬しちまうよ。きっと親の葬式でもこんな感じの言い訳をするんだろう。僕はため息をついた。 それから、線香と瓶のコークを買い、ヘブンを出た。すでに夕日は沈んでいて、仕事を終えたサラリーマンの群れがどこかへ向かっていた。みんな葬式に向かっているような顔をしていやがるから、僕は心の中でそいつらにお礼を言った。サンクス。
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