第1章

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 キヨミは私の唯一の友人だった。 茶色い毛並み、あどけない瞳、小さな小さな躯で、私の身長とたいして変わらない、雌の仔牛。 元々は、父が農業用として、知人から譲り受けた牛らしいが、 セウォル号の事故で姉を失った私にとっては、新たに出来た妹のような存在で、 母親からは、亡くした娘のように思えたのだろう、ごめんね、もっと優しくするからねとキヨミの背中をさすりながら語っている。 姉は、母親と、能く喧嘩していた――。 Kpop歌手になり、日本でデビューする事が将来の夢だった姉は、17歳で家を出て、ソウルのSMエンターテイメントの事務所に入った。 韓国での歌手活動は、収入が少ないうちはビルの地下室での生活を強いられ、毎日の練習や、体型維持の為の食事制限、おまけに恋愛も禁止と、 何かと不便だろうと母親は、お弁当の一つでも差し入れしようと考えていたが、 私の実家の仁川(インチョン)とソウルでは距離があり、両親とも年齢が年齢なので、 練習が休みの間だけ、電話で話しをするので精一杯だった。
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