歌と文字と女と俺

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─…ボロいけれど独り暮らしには広すぎるアパートに着き、部屋の明かりをつける。 大学を卒業後、直ぐに田舎の親元を離れ大阪に居住を移した。 当時はヴォーカリストの道を進むつもりは毛頭なく、ただ趣味で歌えればそれで良かった。 そのうち、俺にも結婚を前提とするような付き合いの彼女ができ、このアパートで同棲するようになったんだ…─。 今はもう傍に居ない、昔の彼女の事を思い出しながら少し切なくなった。 あれから彼女は作っていない…。 色々な出逢いもあったし告白も何度かされた。 俺だって今年で35歳…四捨五入したら40だ。 焦らない訳ではない。 だけれど、自分に妥協してまで女を作る気には到底なれなかった。 「あんた何様!?」と罵声を浴びせられた事もあったが それでも俺は… 異性に対して神経質すぎるほど、慎重になってしまうんだ…。
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