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序章~森の中で~
夜ーーー
暗闇と静寂。
森の中には木々の間から僅かな月明かりが照らす以外には明かりと呼べるものは無かった。
時刻はまだ20時を回ったところだが、何故か辺りは動物や虫の鳴き声もせず、静まりかえっている。
その中でもひときわ大きな木の側に、息を潜めている1人の影があった。
やや茶色がかった黒髪は短く整えられ、
全身にレザー系の簡素な鎧を纏っていて背中には大型の直剣を背負っている。
刃渡り1メートルほどの大剣はだいぶ使い込まれているらしく、ところどころに細かな傷もあるが、薄暗い森の中でも月明かりに反射して輝きを放っていた。
取り立てて豪華な装飾が施してあるわけではないものの、他の装備と比べても明らかに上質な武器だということが分かる。
その剣を背負った男の名はカイル・ガーランド
彼は今、一点を見つめながらある"合図"を待っていた。
青年と呼ぶにはまだ少しばかり幼さの残る瞳には緊張の色が見てとれる。
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