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「ミスギちゃん、来てすぐで悪いんだけど3番テーブルに行ってもらえるかな?」
ドレスに着替え、メイクを終えた途端、店長から指示を受けたわたしは、言われるがまま3番テーブルに向った。
ここは、女が男に夢を売るお店・クラブ・アクア。
わたしの名前はミスギ。
ホールに出た途端、わたしに向かって嬉しそうに手を振る男の姿が目に飛び込んでいた。
あ、また、あいつ。
甘いルックス。軽い喋り。甘えん坊キャラの今風のちゃらちゃらした男の子。
このところ、三日に一度はやってくるあいつの名前は萩(はぎ)。同業者(水商売)だ。
わたしは、この萩が苦手だった。
何をされたわけじゃない。ただ、彼を見るとわけもなく苛立つ。
たちの悪い酔っ払いや、体に障りまくってくるやつ、ストーカーまがいな行動をするキモ男より、なんの理由もなくただ漠然と苦手だと本能的に感じ取ってしまう相手に対する対応の方が断然難しい。
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