三夜 ー前編ー

2/36
44567人が本棚に入れています
本棚に追加
/1234ページ
「今夜も来ないわよね、あいつ。あー、楽でいいわぁ。」 そう言ってビールをぐいと煽る珠美さん。 あいつとは、相原さんのこと。 俺が企業勤めで営業マンをしていた時の取引先さんだ。 ようやく来られるようになったと、わざわざ足を運んでくれたんだが。 珠美さんとは、非常によろしくない状況で会っていたらしく。 「しっかし、泉実ちゃん、真面目なお仕事だったんでしょ?何であんなヤクザと取引なんてしてるのよ。」 珠美さん、ヤクザヤクザと連呼しているが。 「まあ、相原さんはどこまでヤクザと言っていいのか。」 「しかし、堅気ではなかろう。」 それを来店してすぐに言い当てた吸血鬼も大したもんだと思うが、にもかかわらず名刺交換してたって、どういう神経だ。
/1234ページ

最初のコメントを投稿しよう!