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あれは、中学三年生の時。当時家庭科部の部長だったわたしが文化祭に展示した作品がなくなるという事件がおこった。
けれど、わたしはそれを大げさには捉えてはいなかった。なぜなら、なくなったのは、暇つぶしに刺繍したガーゼのハンカチ一枚だったからだ。
もしも、なくなったのがコンクールで賞を受賞したレースのテーブルクロスだったら、大騒ぎしただろう。しかし、その大作は無事だった。
もしかしたら、誰かがいたずらしたのかもしれないし、風に飛ばされてそのまま行方不明になったのかもしれない。それならそれで仕方ない。
その程度の気持ちでしかなかった。犯人探しするつもりなど、毛頭なかった。
しかし、意外にも犯人はすぐに見つかった。家庭科部の後輩が、ハンカチをポケットに突っ込む生徒の姿を偶然にも目撃していたのだ。
大げさにするつもりなどなかったのに、後輩たちは、わたしに報告するより先に、先生に報告してしまった。それで、ことが大きくなってしまった。
盗んだのは、一年生の男子生徒だった。
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