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わたしは、その男子生徒とともに教師に呼ばれた。
男子生徒は、わたしと同じくらい背の低く、底の分厚い眼鏡をかけていた。いかにも小学生あがりの頼りない男の子という感じだった。
_どうしてこれを盗んだんだ!
間に入ったのは、一年生の学年主任で、体育会系の声の大きな男の先生だった。
_おい、聞いているのか?
_すみ、ません。
男子生徒は今にも泣き出しそうだった。
_すみませんじゃなく、盗んだ理由を聞いているんだ。理由を!
_あの、別にわたし、もういいです。大したものじゃないし。正直、ちょっと失敗作だし。
見かねたわたしが間に入ると、男子生徒はとうとう泣き出してしまった。俯きながら肩を震わせ、分厚い眼鏡の下から、ぼろぼろと涙をこぼし、小さなうち履きを濡らした。
_そういう問題じゃないんだよ。花田。これはな、れっきとした泥棒なんだ。おい、泣いてないで理由を言え、理由を。
いい加減、わたしはこの見当違いな熱血教師の尋問にうんざりしていた。そのうえ、
_なんだ。お前、もしかして、花田先輩の事が好きなのか?え?それで、盗んだりしたんだろう。ったく。それじゃ、下着泥棒と変わらないだろう。この、変態が!
こんなことを言い出す始末。
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