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夏祭り。
それは楽しいもの。
だけどあの日、あたしは泣いていた……。
――……
「うぐ……。
えぐ……」
神社で夏祭りが行われてる中、あたしは石段に座り泣いている。
「どうして泣いているの?」
あたしと歳が変わらないくらいの男の子が泣きじゃくるあたしに声をかけてきた。
「ママとはぐれたの……」
屋台に夢中になっていたあたしはママとはぐれ、疲れて石段に座り泣いていたんだ。
「元気出して。
僕も一緒に待っててあげる」
そう言って男の子はあたしの隣に座る。
「うん……。
ありがとう……」
男の子が傍にいてくれるだけであたしは何だか安心できた。
「これ見てごらん」
男の子は綺麗な筒をあたしに渡した。
「何これ?」
初めて見る不思議な物にあたしは興味深々。
「そこの覗き穴からのぞいてクルクルまわしてごらん」
あたしは男の子に言われた通り、穴をのぞきクルクルと回す。
「うわぁ~。
きれ~」
筒を回すと綺麗な模様が色んな形に変化する。
「万華鏡って言うんだよ」
夢中になるあたしに男の子は言う。
「万華鏡……。
綺麗……」
さっきまで泣いていたあたしは万華鏡に夢中になって寂しさを忘れていた。
「真里亜~!」
誰かがあたしを呼んでいる。
この声は!
「ママ!!」
あたしは声に反応し立ち上がる。
「よかったな。
ママみつかって」
そう言って男の子はニッコリ笑う。
「うん!
あ、これありがとう」
手に持っていた万華鏡を男の子に返す。
「いいよ。
それあげる。
それより早くママのとこ行きなよ」
返した万華鏡を男の子はあたしにそっと握らせてくれた。
「ありがとう!
じゃあね!」
万華鏡を握りしめあたしはママの元へ向かった。
……――
名前も知らない男の子。
これっきり会った事がないけどまた何処かで会いたい。
だってこれがあたしの『初恋』だったから……。
……――
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