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「見えてきた」
市原さんが顔を向ける方へ私も視線を向ける。
視界にはもう、私たちを受け入れる港が見えていた。
小木港。
両津港と並ぶ佐渡の玄関口。
その港町こそが市原さんの故郷だった。
私たちは東京からここまで、一般的なルートより少し遠回りで来ているらしい。
急かされることもなく、時間に余裕を持った市原さんのエスコートは
とても心地よかった。
普段時間を気にしてばかりの私が時刻を気にすることもなく、
腕時計もせずに、スマホは感動の瞬間を記録するだけのものになっていた。
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