故郷

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「そろそろ…中に入るか?」 甲板にいれば最初は爽快感はあるが、実際のところは日差しも強くて、潮風はじっとりと肌を覆っていく。 女は日焼けやベタつきを気にするかもしれないと思ったので声を掛けた。 けれど、稲森は髪をなびかせて、まだ珍しそうに海を見ていた。 「もう少しいさせてください」 そう言いながら今度は船尾の方へ歩いていく。 手摺(テスリ)に掴まり、船尾から見る景色。 直江津港を離れ 俺たちが行く先には道は見えないのに 船体の後ろには 小さな気泡の集合が 白い道筋をつくり出していた。
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