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「あ、あの、私…」
「実は、私の家、貴女のお宅の近くですの。お嫌ですか?」
面と向かってそう聞かれると断りづらくて、戸惑いながらも二人で下校することになった。
背も高く、すらりとした立ち居姿はどこか気品を感じさせる。背中に流れるまっすぐな黒髪を風になびかせて歩く横を、背の低い自分が歩いていることが恥ずかしくて人目が無くなるまでひたすら地面を見ていた。
「私の事がお嫌いですか?」
「え?!」
思わず足を止めて彼女を見上げた。
身長差は恐らく30㎝ほどだろうか。
数歩前で同じく足を止めた彼女が典子を観る。
「あ、あの、そういう訳では…まだよく知らないっていうか、人見知り、なんです。」
彼女と視線を合わせるのが恥ずかしくてまた俯く。
「ほら、そうして私を見てくださらない。」
「だから、それは…」
学生鞄を握りしめて目をギュッと閉じた。
初対面の女子と二人きりになるなんて、今までの人生で無かったから、正直どういう反応をするべきなのか、何を話せばいいのかわからなかった。
自分の殻の中で困惑している典子の肩に手を置いて、耳元で真理子が囁いた。
「私は貴女とお近づきになりたいんですの。そんなに怖がらないでくださいまし。」
ビックリして思わず飛び退いた。
耳まで真っ赤になっていることが耳に当てた手のひらに当たる体温でわかる。
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