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家路を辿る典子にとって今日は特別なものになった。
赤の他人、それも初対面でここまで自分に話しかけてくる人物に、初めてであった。
何故自分に声をかけてきたのか、何度考えてもわからなかった。
「あの、小田原さんのお宅って、こっちの方なんですか?」
「ええ。最近此方に引っ越してきたので、こちらの知人もおりませんし不安でしたの。これから仲良くしていただけると嬉しいですわ。」
にっこりと笑顔を向けられて、典子の緊張が少しだけ和らいだ。
徒歩で15分の自宅に着く頃には、彼女に対する警戒心はずいぶんとほどけていた。
「私の家ここなので、また明日。」
「ええ、さようなら。また明日。」
そう言って玄関で手を振り別れた。
・・・
自室に帰ると、ベッドの上に座り、ばたりと倒れて背伸びをした。
緊張した分だけ、プライベート空間に戻ったとたんに疲労感として襲ってきた。
綺麗な人だった。雰囲気も他の同級生とは全く違う。
その彼女が、何故自分に声をかけてきたのだろう。
自慢ではないが典子は友人が殆ど居ない。
「また明日、か・・・。」
嬉しいような、恥ずかしいような、不思議な感覚を覚えながら制服を着替えるのだった。
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