ファーストコンタクト

10/13
前へ
/18ページ
次へ
 典子は動転しながら受話器をとったが、通話音が聞こえない。  電池切れではないのはディスプレイで確認できる。  すると背後で母の悲鳴がして、驚いた拍子に受話器を落として振り返った。  視線の先に、羽交い締めにされた母の苦しそうな顔があった。  「お、お母さん?!」  母を縛り上げている黒いフード姿の人物の横に、明るい髪をした妖艶な美女が立っていた。揃いの服装をしているので、2人組の強盗だと思った。  お母さんを離して、と言いたかったが、口を開くだけで声が出ない。空気が薄いのではないかという程に息が苦しい。  立っていることも出来ずに腰が抜け、ただ苦しそうな母を見つめることしか出来なかった。  美女は典子を見下ろしながら、口の端をつり上げた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加