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温かい母の背中をいくら揺すっても、もう何も反応してくれない。その事が受け止められずに典子は手を動かし続ける。見開かれた目は瞬きを忘れていた。
その間に母を殺した女が典子の横に来て、短剣を構えた。
今にも振り下ろした刃が典子の首筋に突き立てられたと思えた瞬間,・・・。
女が見えない力で廊下の壁に吹き飛ばされた。
痛みを堪えて立ち上がり身構える女の視線の先に、玄関から右腕を伸ばす真理子の姿があった。
壁際に居たもう一人が典子に襲いかかろうとしたが、一陣の黒い影がそれを防ぎ、床に組み伏せる。
女は舌打ちと組み伏せられた仲間を置き去りに、階段の手すりに手をかけ軽々と2階に飛び上がると、侵入口の窓から夜の闇に消え去った。
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