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やっぱり、そうだったんだ。
どうしてそんなこと…。
それに資料まで。
なんだか裕らしくない。
「小林はね…資料や情報を使われたって…言ってたけど。それも本当なの?」
私の言葉に、裕は少し驚いた表情を見せると、
箸でつまんでいた、軍艦巻きのイクラが
ポロポロと数粒、お皿の上へ落ちていった。
「ふーん、なるほどね…そういうことだったのか」
裕は一人納得したような
顔をして小さく何度もうなずきながら、
「あいつの俺に対する態度のワケがやっとわかった」
って付け足した。
ちょっと…一人で解決しないでよ。
裕を見ると、手酌で注ごうとしている
日本酒。
あっ…。
裕の手から、とっくりを
取って、おちょこにゆっくりと注いだ。
そんな私を見下ろしてる視線を感じる。
「お酌なんてしなくていいよ。今日は仕事じゃない」
目を細めながら、優しい表情でそう言ってくる。
“仕事じゃない”って言葉に、胸の奥がドクって大げさに脈うったのと、
仕事じゃないなら、どうして私を食事に誘ったの…?
なんてそんな理由を聞けるわけでもなくて、
ただ、うんうんって首を縦に振ってうなずいた。
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