免疫

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肩書きを大事にする小林と、 部下の仕事を任された裕。 両方の立場に立つと、お互いの言い分は どちらもわからないわけじゃない。 きっと二人とも、いい気分ではないのは確か。 「大事な仕事取られたって思う小林の思いは当然だし、小林の仕事を任された裕の気持ちもわかるよ。 それに…裕は小林の資料… 使いたくなかったんでしょ?」 データを使わなかったって言った裕。 裕はプライドが高いから きっと使うことはなかったんじゃないかな… そう言った私に、 裕はフって、うっすら笑った。 「ならいいや」 「えっ?」 「麻衣がそう思ってるならそれだけでいい」 そう言った裕の瞳は、会社では見せることのない、大好きだったあの頃と同じ瞳で… 想像もしていなかった言葉は “私だけわかってればいい” …勝手にそうも解釈したら なんだか“特別”な気がして やっぱり胸は高鳴って、 封じ込めようとしていた 私の気持ちを揺さぶってくる。 思わず目が合ったのをそらさずにはいられなかった。 ずるいよ… 裕はずるい。 裕のたった一言の言葉が、 まだ、好きでいてもいいのかなって… ひそかになら思っていてもいい? って、そんな感情を 生ませてくる。 本当に 裕は、ずるいよ。
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