免疫

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そんな裕の態度に少しイラッとしながら 「ねぇ?聞きたくない?」 顔を覗き込んだ私を、 ジロっと目線だけで睨んでくる。 「言いたいんだろ?わかったよ聞いてやるから言ってみろよ」 店に入ってから、ずっとカウンターに向かって座っていたのに、 回転椅子を少し動かすと、私の方へ体を向けてきた裕。 改めてそんなマジに聞かれるとちょっと動揺しちゃうけど…でも聞くならきっと今しかない…。 明石さんから聞いた話とか 今まで知ってる裕のことを 頭の中で思い出す。 噂といえば… 裕は、彼女がいないってこと… それに告白した子は全滅してるってこと。 「課長の断り文句…」 「はぁ?なんだそれ…」 裕は呆れた顔を見せながら、 ハハって声を出して笑った。 「忘れられない人が・・・いるんだって?」 そう付け足すと、 頬が上がっていた裕の顔はスーッとさっきと同じ真面目な表情に戻った。 「昔付き合ってた彼女が忘れられないらしいじゃん」 裕はくるっと体をカウンターに向きなおすと、 「お前…よくそんなこと知ってるね?」 って小さな声で、ぼそっと呟いた。 裕がなんて答えてくるのか聞くのが凄く怖い。 怖いけど、 その元カノは私ではないってことは、今日の“部下”発言で確定した。 だから“部下”より怖い発言なんて きっと今の私にはないんじゃないかなって思ったら腹をくくれる。 大丈夫…。 何を聞いたって私は これ以上傷つかない。
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