心情

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周りのカップルを見ながら なんで、俺は別れを選んでしまったんだろうか… そんな後悔ばかりで、 どこへ向かうわけでもなく ただひたすら歩き続けた。 何が正しいのか 何が間違っていたのか 結局、答えのでない迷路を彷徨った。 顔をヒリヒリ突き刺すような冷たい風が、耳まで凍らせてくる。 だけど、手袋を握りしめたその手だけは暖かくて。 麻衣…。 その時になって初めて、 離してしまったあいつのぬくもりが、 俺にとっては、何よりも 大事なものだったんだってことに 今さら気づいたんだ。 それから月日は流れ、 大学を卒業し、 就職をして、 何年も経って、 別れたあの日から毎日忘れることができなかった麻衣の笑顔は、 一週間、 一ヶ月… そして徐々に 少しずつ少しずつ、 俺の記憶から消えていって “裕・・・大好き…” あいつが俺を、どんな風に呼んでいたのか… その声も 忘れていった。
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