免疫

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「ほらっ!麻衣のリクエストに答えてやるよ。和?洋?それとも中?」 この店に入れなかった私。 やっぱり心についた傷は 思ったよりも深かったみたい。 「回ってない…お寿司」 裕は “はぁ?”って声は出さずに口元だけ そんな顔をする。 「ったく…俺は生の気分じゃねぇ」 そうブツブツ言いながらも またどこかにスタスタ歩き出した。 これくらいいいじゃない。 聞きたくもないのに いきなり気持ち聞かされて そのおかげでこれから私は あなたを忘れる努力を しなきゃいけないんだから。 この気持ちを忘れる代償にしたら、 寿司なんて安いものだよ。 まぁ…私が勝手に恋しちゃっただけだし、 ただの八つ当たりなんだけど… でも今日くらいはわがまま聞いてよ。 これといってとくに会話もないまま 繁華街を抜けて、 騒がしかった町並みも 少しずつ落ち着いた雰囲気になったところで 裕の足はピタっと止まると 2、3歩すぐ後ろを歩いていた私の方へ振り返った。 「ここでいい?」 指さしたその店をのぞくように見ると、 その店は正面から入り口までに、少し中庭のような庭園がもうけられていて、 日本料理屋を思わせる 雰囲気が漂ってた。
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