第一章

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「ゆめこぉ?待ってよぉ?」 今日は中学の入学式。 あたしは張り切って家を出た。 後ろから追いかけてくるのは、幼馴染みの翔(カケル)。 幼稚園から一緒の大の仲良し。 っていうか、もう家族みたいなものかな。 何でも知ってるし、何でも話せる。 あたしの姉妹であり、親友であり、そしてナイトでもある。 何でナイトかって? 「何張り切ってんのさぁ?」 涼しい顔で追いついてきた翔に、あたしは少し乱れた呼吸を整えながら振り向いた。 「だって……」 「あ、夢子、またぁ?」 「うん」 あたしは小さく頷いた。 「うん、見たの、夢。あたしの王子様がこの中学にいるっ!」 あたしの興奮した様子に、翔が呆れ顔で小さく溜息をついた。 「でもさぁ、夢子、小学校入学の時も、そんなこと言ってたよね?」 「うん、あの時はまだ小さかったから、ぼんやりしてたけど。 でも今回は違う。凄いはっきりした夢だった。 王子様が、こう、あたしの手を取って、 『僕が君を守るから……』って、あたしを優しく見つめてくれたの。 王子様の顔もはっきり覚えてる。 その手の感触だってまだ残ってる……」 高揚する気持ちを押さえ、あたしは唇をきっと結んだ。 「そっか、じゃ、仕方ないなぁ。 急ごう、夢子!一番乗りして、待ってなくちゃ!」 翔はにっこり笑うとあたしの手を取って走り出した。 いつもあたしの気持ちを最優先に守ってくれる。 だから翔はあたしのナイト。 それには、ちょとした秘密もある。
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