第二章

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「っ……」 彼は目を見開きさっきまで重なっていた口元を大きな手で覆った。 「今日はもう帰れ」 彼はそう言うとあたしを無理矢理立たせ、背中を押しやられるように家から出された。 バタンと閉まったドアの前であたしはしばらく呆然と立ち尽くしていた。 ーーそれから間もなく彼が結婚したと母から聞いた。 あの時どういった理由でキスしたのか分からないが、その後付き合った誰ともあの時のキスを越えるものはなかった。 そんなあたしも大学進学を機に上京。 そのまま就職し今に至る。
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