第一章

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冷たい水で顔を洗い正面の鏡に写った自分と目が合う。 三十路を過ぎ疲れ切った顔は所々肌荒れをおこし、目の下にはうっすらとクマが出現している。 あの時、彼が優しく撫でてくれたサラサラ艶々だった黒髪は、何度となく繰り返されたパーマとカラーリングの果て、痛みまくったボサボサ頭になっていた。 あれから時は過ぎ、夢見る少女は毎日のように夜中まで酒を飲む彼氏いない歴3年、三十路を3年すぎた女になっていた。 「元気にしてるかな」 初恋の人。 あの時の淡い気持ちを思い出しながら、夕べ夜中までの酒がまだ残る胃に市販の野菜ジュースを流し込む。 そんな超簡単な朝食を終えスーツに身を包み家を出た。
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