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カタカタとキーボードを打つ音だけが部屋を支配する。
私はある文学賞に応募するため、部屋に籠り作品を書いていた。
タイトルは『聖騎士ユーリナイト』。いわゆる冒険ファンタジーだ。
今までも何度か応募してはいたが、いずれも落選――。作家デビューの夢はなかなか難しかった。
「よし。出来た!」
私は、最後の一文を打ち終わると、ファイルに保存し手元にある時計を見た。針は深夜2時を指している。
「うわ、もうこんな時間」
喉の渇きを感じた私は、部屋から出るとキッチンへと降りていった。
なるべく音を立てないように慎重に歩き、冷蔵庫の中からリンゴジュースのパックを取り出す。コップに入れて一気飲みすると、フウッと息を吐き出した。
「一仕事終わった後は、美味しいねえ」
一人満足すると、パックをしまい部屋へと戻った。
一息ついた私は、プリンターのアイコンをクリックし印刷を開始した。印刷が終わったら後は綴じるだけ。
私はホッとしたのと同時に疲れを感じ始めた。
「ふわぁぁ~。さすがに眠いなあ~」
プリンターの無機質な音が、まるで子守唄のように聞こえてくる。
眠気に耐えられなくなった私は、そのままキーボードの上に突っ伏し夢の中へと入っていった。
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