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頬に風が当たっている――。
私はうっすらと目を開けた。
視界に入ってきたのは抜けるように青い空。そして、山の緑。
しかし、どこかしっくりこない光景に首を傾げる。
(あれ? 山が逆さまだ)
まるで水面に映った景色を見ているように、青い空の上に山の稜線が見える。
初めは何がどうなっているのか分からなかったのだが、頭を動かし足元を見てギョッとする。
「足の方が……空? ってことは――」
恐る恐る首を動かすと、頭上には小川の流れる草原が……。
「キャーー!」
自分が真っ逆さまに落ちていることにようやく気付いた。しかし、近くには掴める物は何もない。
(どうしよう、どうしよう……!)
どんどん迫ってくる地面。私はギュッと目をつむり祈るしかなかった。
「お願い。止まって~!」
無駄な願いだとは分かっていても、願わずにはいられなかった。だが、
――ブンッ!
空気が振動するような音と共に体がフワリと浮き上がった。
(えっ……?)
何が起こったのか分からないまま目を開けた。誰かに姫抱っこされているかのような格好のまま、ゆっくりと下降していく。
(う、浮いてる? うそ……)
そして、次の瞬間、
――ドスン!
「きゃあ!」
お尻から地面に落下したのだった。
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