プロローグ

4/6
前へ
/19ページ
次へ
 頬に風が当たっている――。  私はうっすらと目を開けた。  視界に入ってきたのは抜けるように青い空。そして、山の緑。  しかし、どこかしっくりこない光景に首を傾げる。 (あれ? 山が逆さまだ)  まるで水面に映った景色を見ているように、青い空の上に山の稜線が見える。  初めは何がどうなっているのか分からなかったのだが、頭を動かし足元を見てギョッとする。 「足の方が……空? ってことは――」  恐る恐る首を動かすと、頭上には小川の流れる草原が……。 「キャーー!」  自分が真っ逆さまに落ちていることにようやく気付いた。しかし、近くには掴める物は何もない。 (どうしよう、どうしよう……!)  どんどん迫ってくる地面。私はギュッと目をつむり祈るしかなかった。 「お願い。止まって~!」  無駄な願いだとは分かっていても、願わずにはいられなかった。だが、  ――ブンッ!  空気が振動するような音と共に体がフワリと浮き上がった。 (えっ……?)  何が起こったのか分からないまま目を開けた。誰かに姫抱っこされているかのような格好のまま、ゆっくりと下降していく。 (う、浮いてる? うそ……)  そして、次の瞬間、  ――ドスン! 「きゃあ!」  お尻から地面に落下したのだった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加