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「痛たたっ……。もう、なに~?」
お尻を擦りながら起き上がり、ハッと自分の格好に気付く。
見たことがない、地味な薄茶色のワンピースを着ていたのだ。
(えっ?)
驚いたのはそれだけではない。右手側には、赤い石の付いたメタリックグリーンの杖。そして、左手側には古めかしい革表紙の本が落ちている。
(ど、どういうこと?)
本を拾おうと前屈みになり、私はさらに驚くことになった。
肩からこぼれた髪の色がピンク色をしていたのだ。
「!」
さすがに異常を感じた私は、近くを流れる小川に這いつくばるように近づき、そっと自分の姿を映した。
そこに映っていたのは、自分じゃない誰か――。
腰まであるピンク色の髪に、瞳の色はすみれ色。整った顔立ちは、女の自分でも『美少女』と言えるほどのものだった。
「だ、誰これっ!?」
言ってから、ハッと口元を押さえる。
声も自分のものではなかったのだ。
「……」
何がどうなっているのか全く分からなかった。
自分は今まで部屋にいて、そして、小説を書いていた。休憩しようと台所に行って、そして、部屋に戻ってプリントを――。
「そ、そっか。あの後眠くなって寝ちゃったから、きっと夢を……」
だが、さっき尻餅をついたとき、確かに痛かった。
実際に椅子から転げ落ちでもしていれば、夢の中でも痛いかもしれない。だが、転げ落ちた時点で目が覚めるだろう。
(夢じゃ……ない?)
私は呆然としたまましばらく動けないでいた。
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