第1章 物語の世界・1

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 あり得ない事態が起きていることに、頭の中がぐるぐると回り始める。 (なんで? どうして? 何きっかけ!?)  半分パニックになりながら頭を巡らせていると、駆け寄ってきた少年が心配そうに顔を覗き込んできた。 「君、大丈夫?」  聞き覚えのある声優さんと同じ声……。  その声は少年のイメージにぴったりで、全く違和感がない。  よく晴れた空の青と同じ色をした瞳に、少し幼さの残る顔立ち。優しくいたわるような声音に、私の気持ちも少しずつ落ち着いてきた。 「えと……、立てる?」  スッと手を差しのべられ、改めて自分が呆けていたことに気付いた。 「あ……、大丈夫! 立てます!」  気恥ずかしさもあった私は、手を借りることなく自力で立ち上がった。  そこへ、私が放置していた杖と本を持って金髪美人の女剣士がやってくる。 「あなた、魔術師?」 「あ……、一応、そうみたい」 「えっ?」 「あ、いえ! み、見習いです!」  女剣士の不信感たっぷりの視線に耐えきれず、私はそう答えるしかなかった。 「さっき、空から降ってきたように見えたけど……」 「ああ、あれは……」  私はこの場面を思い出し、自分が書いた通りの答えを言った。 「私のお祖父さんが転移魔法の研究をしてて、その実験に立ち会ってたら爆発に巻き込まれちゃって……」 「それで、ここまで飛ばされたってこと?」 「あ、はい」  そう。このシーンは、主人公の少年と、共に旅立つことになった女剣士が一人の少女と出会うところだ。  その少女の祖父は有名な魔術師で、転移魔法の更なる使い方を模索していた。  しかし、実験が失敗し、暴走した魔法の力によって少女はこの地に飛ばされてしまう……筈だった。  でも、ここに現れたのは私。  確かに魔法使いのような格好はしているが、見た目も声も私のものではない。まして、その少女のものでもない。  この事が何を意味し、後々どう関わってくるのか……。  この時の私には何一つ分からなかった。
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