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私が選んだのは、市内でも割かし有名な心霊スポットで。高校時代などの雑誌を引っ張り出して調べたものです。
そういった遊びをしていた事もありつつ、それでも危険な目にはあっていない。そんな思いも確かにありました。
歩いて30分程度の道中、私は古い雑誌を頼りにその場所へと向かおうとしていたのですが。
「あぁ、俺、道分かりますよ」
そう彼が言うものですから、彼の半歩後ろくらいをほぼ横並びに歩きながら。私はこの雰囲気を記憶に焼き付けようと周りをキョロキョロと見回していました。
コンビニを立ってから、耳の奥でチリチリと何かが燻る様な違和感。高校時代にも感じた、心霊スポットに近付くと感じるゾワゾワとする様な感覚。
記憶の片隅にあったそれを唐突に思い出すと同時に、私はその頃の友人を思い出して少し笑っていたらしく。
「楽しそうですね、こういうの好きなんですか?」
「あ、いえ。昔友達とこういう事をした時を思い出して、昔に戻ったような」
「へぇ、俺はダメなんですけどね。こういうの」
そう言いながら肩を竦めた彼は、自分で言うだけあってやはり怖がりなのかな?と。
「じゃあ、どうして今日は来られたんですか?」
「住んでる所が近くて、あのコンビニが見えるんですよ。貴方がすごく心細く見えたから……つい、ね」
それは悪い事をした、と思いながらも今更引き返せはしません。
夜だからか、肝試し気分も混ざるからか。生暖かい風がざわざわと揺らす木々も、私の足音が反響するだけの静かな道も。何故か私の気分を高揚させ、心を鷲掴みにしていました。
魅せられていた、とでも言うのでしょうかね。
「そろそろ、きますよ」
「何がですか?」
歩きながら彼が不意に告げた台詞に、私が首を傾げ聞き返した時。
キィィィィィン――
耳障りな音が私の耳から高らかに鳴り響き、私は思わず踞りました。
そこでふと気付いたのは、私が見る地面の先にから、グッとごみの数が減っているという事。
此処までの道は。吸殻が捨てられていたり、道の端にコンビニの袋があったりしたのに。
此処から先は違うのだ、そういった無言の警告だったように今では思えます。
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