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今度はあまりの大音量に加えて、じくじくと突き刺す様な視線があるのを感じました。
踞るのではなく崩れ落ち、地面に付いた自分の両手が震えていたのは今でも瞼に焼き付いています。
「帰りましょう、限界です」
彼の言葉を皮切りに、私の耳へ聞こえていた耳鳴りが、はっきりと、鮮明に、私へ向けて、私だけへ向けて、
カエレクルナコナイデココハクルナワタシノカエレイバショクルナコロスカエレワタシノチカヅクナカエレココハコナイデクルナカエレコロスコロセカエレイバショクルナコナイデクルナコロスカエレイバショワタシノクルナカエレココハクルナワタシノコナイデチカヅクナカエレイバショワタシノチカヅクナコロセワタシノコロセチカヅクナカエレクルナイバショカエレクルナコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセ
「ごめんなさいっ!もうやめてっ!」
私が耳を抑えながら叫ぶと、声はパッタリと止んで。屈みながら私を正面から見据える彼の双眸が真っ黒で、真っ黒で――
白い部分まで全部塗り潰したみたいに真っ黒な目で私をじーっとみつめながらどくどくと頭から血をながしてにたーってみみあたりまでさけたくちでわらってっっっ!!!
「黙りなさいっ!」
彼の力強い言葉で、私はふっと身体が軽くなるのを感じました。
顔を上げれば、先程までと何ら変わり無い彼の姿。
それと、はっきりと見る事は叶わなかったのですが。幾つもの人間を模した何かがぞるりと這い出して私を囲む気配がぼんやりと見えていました。
「もう、帰りましょう」
私はもう、彼の言葉に黙って頷くしかありませんでした。
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