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次々とキャリーケースを引っ張りながら、出口から人が出てくる。
その中に、荒川のくそムカつく愛しい先輩、柴田優(しばたまさる)の姿はあった。
人目を引く、目立つ容姿をしている。
脱色しただけの痛んだ茶髪は、ハニーブラウンと唱われ、
日サロで焼いた肌は、三日で飽きたきりのサーフィンの為だと信じられ、
社長の奥さん似の女顔をGUCCIのサングラスで隠す柴田の姿。
「柴田先輩」
「うわっ」
名前を呼んだら、柴田は飛び上がるように驚き顔色を変える。
けれど、荒川はにっこりと甘く笑うと、着崩したスーツのネクタイを掴む。
「駄目ですよ。スーツはきちんと着なくては」
「けん、俺、その、ご――んっ」
柴田が『ごめん』という前に、その唇は塞がれた。
「んうっ」
荒川は柴田のネクタイを引っ張り、サングラスを奪い放り投げると、ゲートを通る人たちの視線など目もくれず、
ただただ柴田の唇を貪った。
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