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それからしばらく車内には理由のわからない沈黙が流れた。
葵は自分の気持ちを一生懸命考えていて、晴翔は多分……葵の行動の意味を考えていて。
それからまた更に少しして、先に口を開いたのは晴翔だった。
「……俺の考えが当たってるとしたら、多分」
「え?」
時間帯は遅くなってきていて、道路の交通量も減ってきている。
「お前がもし不安になってるとして。なってるんだとしたら、……そんなの、いらない不安だから」
葵が晴翔を見た時、彼はちょうど左手で前髪を掻き上げた瞬間で、その表情を見ることは出来なかった。
「なんて言うかその……ちゃんと、考えてるから」
「ハル……?」
「まだちゃんとはっきり言ってやれねぇし、いつとも言えない、けど」
一息置いて、でも、と言葉が繋がれる。
「少なくとも俺、今まで中途半端なことしてた分、お前と向き合う時間ていうか、そういうの過ごしながらお前をこれからもっと好きになってく気がするし、……そう言う時間、楽しんでるってのもある」
「………」
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