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自分でもよくわからない。
どうして、よりによって好きになったのがこの男なんだろう。
………なんていう自問はもう何度したことだろうか。
「口に合わねぇのか?」
「―――は、」
「あんまり無表情で食ってるから」
「え、うぅん」
まずいわけがない。
心の中で付け足す。
佐伯葵が想いを寄せる相手、片桐晴翔は、中学時代のクラスメートだった。
体育祭とかでは無駄に熱くなってるときもあったけど、基本的には周囲から好かれており、後輩にも優しくて面倒見がいいし、運動神経も抜群。
成績に関しては詳しく知らないが、でもとにかく目付きが鋭い割に、笑った時の笑顔が堪らなく印象的―――
と、これはそのクラスメートだった中学時代までの記憶。
そこからは進路も全然違っていたし、顔を合わせたのなんか同窓会の離れた席と成人式くらいで、本当に本当に接点なんて無かった。
そもそも、クラスメートと言えど、本当にそれ以上でもそれ以下でもない、ただのクラスメート的な存在でしかなかったんだけど。
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