片想いの週末事情

6/10
前へ
/107ページ
次へ
本当にショックだった。 だって片桐晴翔と言えば、当時は誰に対しても分け隔てなく親しげに接するのが常で、クラスメートだって大半が名前で呼ばれていたり、そうでなくても名字で呼び捨てだったりして。 サバサバしている性格の彼が名字でさん付けなんて、かえって違和感があったくらいだ。 そう言えば、そんなことでショックを受けた過去を抱えていたにもかかわらず、再会したその日にはすでに葵と呼ばれていた気がする。 そんなことがあって、その日こそ葵は片桐くんと呼んでいたが、会う頻度が重なるうち、試しに「晴翔」って呼んでみたら、普段からそう呼んでたかのようなごく自然の反応をされた。 あの瞬間は、正直こっちの方が動揺した。 何度か呼ぶうちに呼び慣れて、ついには「はると」すらやめて現在の呼び方に落ち着いたのだけれど。 「ていうかさぁ、いつもいつも大変じゃないの」 「何が?」 「いつもハルがご飯作ってるんだもん」 「お前仕事して帰ってくるだろ」 「それはお互い様じゃん」 「んー……一応客だし」
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

204人が本棚に入れています
本棚に追加