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晴翔のアパートでご飯を食べるようになってから数ヶ月。
思い起こせば、葵が作らせてもらったことは一度も無かった。
しかも毎回毎回、嫌味かと思うほどなかなか手の込んだものをこの男は作って出す。
そう言えば、最初に酔い潰れた介抱のお礼と称して出された夕食は、お礼と言うには決して豪華でも華やかでもなかったが、地味に手の込んだものばかりだった。
独り暮らしをする20代の若い男性が出すものには思えない。
ちなみに本日は肉じゃがと豆腐とわかめのサラダ、大根の味噌汁。
晴翔が得意な和食だが、本当に手が込んでいる。
昔から技術家庭科や美術の授業で手先が器用なことは知っていたが、料理まで得意だったとは。
少なくとも、葵は20代男性が作る肉じゃがに絹サヤが入っているのを初めて見た(肉じゃが自体初めてだが)。
それにしたって、大変だろう。
夕食が乗っている小さなテーブルで、葵から角を一つ挟んで座る晴翔は、ネクタイこそ外されているがワイシャツにスラックスと言う、仕事スタイルそのままだ。
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