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「たまには私作るのに」
「いい。お前の料理とか怖い」
「……食べたことも無いくせに失礼な」
これでも葵だって独り暮らしだし、料理だって結構好きで自信はある。……肉じゃがに絹サヤを入れるだけの気を回す自信は無いけれど。
それにしたって、と葵は思う。
「……何だよ、怖ぇ顔して」
「元からこんな顔なのっ」
そして角一つ挟んだ先に座る晴翔を見つめるふりをして睨む。
実に悔しいことだった。
何と言っても、再会した晴翔はまだあどけなさの残る中学時代と比べてかなり成長した。
男らしく、逞しく。
より男前に。
涼を求めて第二までボタンが外されたワイシャツとか、たまにふわっと香るメンズの香水とか。
男として魅力に磨きのかかったかつての思い人を前にして、なおかつ頻繁に一緒にいるようになって、その気持ちが再燃しない女なんているんだろうか。
………少なくとも葵はばっちり再燃しちゃった組だ。
あの頃だって十分カッコいいと思っていたのに……
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