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ザクッザクッザクッ…
カレジは雪の中を再び歩いていた。
でも、さっきまでとは違う。
辛くて真っ暗だった心には灯りがともり、暖かだった。
宿屋には、五分もかからずに着いた。
入り口が二カ所あったので悩んだが、ジェーンに倣って、裏口と思われる、小さい方の扉をノックした。
すると、すぐに元気のいい女性の声がして扉が開いた。
「はいはい、お待たせね!…あら?どちら様?」
顔を出したのは、四十代くらいの、ふくよかな女性だった。
茶色い髪を頭のてっぺんで、おだんごにして、ひとつにまとめていた。
おでこをだしているので、明るい笑顔がより光って見えた。
「初めまして。ダンさんから頼まれて、これを届けに来ました。」
カレジは二つの袋を差し出した。
洗い物でもしていたのだろうか。濡れた手を白いエプロンで拭いてから袋を受け取り、中身を確認した。
「あら!?ジェーンが取りに行ったはずのものよね…。今、戻って来たと思ったけど…。あの子、おっちょこちょいな所あるから、忘れて帰って来たのね。ありがとう。ええと、お名前は?」
「あ、カレジです。ダンさんのお店で働くことになりました!これから、よろしくお願いします!!」
カレジはペコリと頭をさげた。
「私はマーラ。ジェーンの母親よ。うふふ。あなた、よぉーく見たら、男前ねぇ!ちょくちょく顔を見に行かせてもらうから、よろしくね!あ、そうだった!ついでに今、代金も持って来るから、ちょっと待っててね。」
マーラはバタバタと奥へ入って行った。
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