~第四章 ジェーンの宿屋~

7/28
前へ
/28ページ
次へ
 その日から、カレジの居候は始まった。 ダンの家の二階の小さな部屋を借りて、荷物を広げた。 部屋は木造で、タンスとベッド、そして窓があるだけのシンプルな部屋だった。 カレジが部屋で荷物を片付けている間に、ダンは風呂を沸かしてやった。体も冷えているだろうし、流れついてからゆっくりくつろぐこともできないでいただろう。 それは、ダンの気遣いと優しさだった。 カレジは喜んで、すぐに風呂に入った。 体を洗うのも久しぶりだ。きっと、ものすごく異臭を放っていたに違いない。頭もゴシゴシと洗って、スッキリした。洗っていて、今更気付いたのだが、すっかり髪も伸びてきた。 そして、湯船に浸かると、体も心もホカホカとしてきて、何故だか涙がでてきた。 なんて、あったかい場所に辿り着いたんだろう…。 村に住んでいた頃を思い出す。 もう、ぼんやりとしか記憶に残っていないが、毎日みんなが笑顔で、悲しいことなんて、知らなかった。 そして、父と母を思い浮かべた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加