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神聖戦記の過疎化は深刻だ。
古参ユーザー達がマンネリしたゲーム内容に飽き、引退してしまう。
そしてせっかく入った新人も、ルールの難解さに、辞めていってしまう。
悪循環だ。
それを食い止める事が出来るのは、意欲的な運営スタッフだ。
だがここ数年、神聖戦記のシステムに目立った変化は無い。
怠慢運営…と呼ばれるのも仕方がない。
また、モバイルゲームの特徴である、人間関係の難しさも過疎化の理由だろう。
コミュニティには、既に難解なローカルルールが存在しているケースや、コミュニティ内で派閥抗争が行われていることもある。
その抗争は、公式サークルまで飛び火し、新人達を寄せ付けない雰囲気を醸し出している。
イジメや、擬似恋愛の果に、辞めていくケースも少なくない。
これらの人間関係を総じて、モバイルゲームの闇…と、僕は呼んでいる。
僕が国を立ち上げた理由は、皆で和気藹々とゲームを楽しみ、新人も気軽にコミュニケーションを取れる環境を作るためだ。
「ココちゃん、何か困った事があったら、何でも僕に相談してよ。時間はいつでもいいから、チャットしてくれればいいよ。」
ココちゃんは、右も左も分らない新人だ。
僕が守ってあげなくちゃ。
「わーいヾ(@⌒ー⌒@)ノ早速シュンchanにチャットしたょ。見て見てー(>ω<)」
か…かぁわいいなぁ…ココちゃん。
僕は、鼻の下を海底2万マイルほど伸ばし、デレデレしたみっともない顔で、チャットへ向かった。
どれどれ…ココちゃんの相談は、シュンお兄ちゃんが解決してあげるぞぉ。
ん…?
チャットが2件来てる。
1件はココちゃんだとして…もぉ1件は…なんだ姫子かよ。
「ちょっとー、妬けるんですけどー。私も構って欲しいんですけどー。」
ウザったい幽霊だな。
「ただ新人の相談に乗ってあげるだけだよ。」
「私も相談あるんだから聞いてよー!」
「可及的速やかに述べろ。」
「んとね…私に好きな人がいるんだけど。」
「はいはい、それで?」
僕は鼻糞をほじりながら返信した。
「その人が私の愛に応えてくれなくて困ってるの。どうしたらいいかな?」
「諦めろ。じゃあな。」
僕は姫子からのチャットを閉じ、ウキウキしながらココちゃんのページへ向かった。
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