入国者

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僕が辺りを見回すと、そこは1ヶ月前と全く同じ光景があった。 この空間を照らす唯一の明かり、と言っても照らしているのはその真下だけだが、それだけだ。 他は全て闇。 この空間が一体どれだけの広さなのか、僕には検討もつかなかった。 そして明かりの下には、2つの机と椅子の存在を、微かに確認することが出来る。 そして2つの机の間には、純白のドレスを着た、端整な顔立ちの女性が立っていた。 その女性が僕に歩み寄って来るより先に、僕が口を開いた。 「いいか姫子、今後ここへ僕を拉致する時は、必ず僕の許可を取れ。」 「断る。」 「それから僕の髪の毛を掴むな。大量に抜けたらどうするんだ。」 「それを写真に撮って、公式サークルに貼る。泣いてるシュンタソを見て、ひゃっひゃっひゃっと高笑いする予定。」 それじゃあまるで関西の大物芸人じゃないか。 なんてドSなんだコイツは。 「今すぐ僕の部屋に戻せ。僕は君の暇潰しに付き合ってる暇は無いんだ。」 「毎日ログインしてるクセに。」 「黙れ。用があるならさっさと済ませろよ。」 「ねぇ、凄くない?遂に二の腕まで出せるようになったの。私どんどん成長しているの。その内シュンタソの部屋に出れる日がくるかも。」 冗談じゃない。 僕の携帯を壊す気かよ。 「僕を自分の成長度合いの実験体にするな。これからココちゃんに神聖戦記での教訓を教えてあげるんだ。」 「蘊蓄をベラベラひけらかす男は嫌われるよ。私そういう人嫌い。」 「お前に嫌われようが何一つ痛くないね。」 僕は椅子に腰掛けた。 それにつられるように、姫子も反対に置いてある椅子に座った。 「ねぇ、あの子ちょっと変じゃない?」 お前が一番変なんだよ! 「それに、ちょっと怪しいところもあるの。」 大丈夫。 僕はノバゲーで一番の怪奇を目の前にしてるから。 「怪しいって…なんだよ。カードの事か?確かに貰ったっていうのは腑に落ちないが、そうゆう事もあるだろう。僕だってあるよ。引退者から貰った事。」 「うん、確かにそれもそうなんだけど、シュンタソの国を選んだ理由。なぜシュンタソの国を選んだの?」 「なぜって、宣伝効果だよ。公式に募集文載せただろ。」 「国へのリンクは?あなたの事を知らない新人の子が、星の数程ある国から、リンク無しであなたの国を探すことなんて出来るかな。」 あ……リンク載せるの忘れてた。
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