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拓けた場所に出る。線路がある、電車が走っているようだ。
「此処は、南西の方かな?」
人気はないが、家が何件か見える。近くにあった家に窓から浸入する。長らく使われた痕跡がない。
クローゼットを開けてみると、女性用の服が何着も掛けられていた。その中から動きやすい服を選び、着る。
「もう使ってないなら、いいよね貰っても」
血がついた服をゴミ箱に捨て、家を後にした。
辺りをフラフラ歩くと、標識が目についた。
『アフトリア六番街』。錆びれていて、所々文字がかすれているが、そう読み取れた。
「六番街って、確かスラムの」
『アフトリア』市街地以外では、寂れた地区もある。此処六番街以外にも、スラム街は幾つか存在する。
見たところ、この六番街にはもう誰も住んではいないようだ。皆立ち退きしたのか、地区に移動したのだろう。
標識の側には『アフトリア』の地図があった。六番街は端に書かれていた。地図の中心は市街地が大きく書かれている。十字の形をしていて、その大きさがよく伝わってくる。
エルは地図を頼りに、六番街から近いカースト通りを目指すことにした。ここは市街地に続く道路で、人通りも多いだろう。
危険かもしれない。しかし、エルにはこの街から抜け出す術を見いだせずにいた。市街地にいけば、何もすることが出来ない。ただ、そんな現実を、地図がエルに突きつけていた。
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