第1章 『審判』

12/15
前へ
/15ページ
次へ
死体をトラックに詰め込む。ヒューズは思案した後、指を鳴らした。 「先輩、この死体、解剖が済んだら俺にくれないっすか?」 「また例の悪趣味に使うのか?」 「あー、まあ、そんな所ですかね」 ヒューズが運転席に乗り、エンジンを掛ける。トラックは猛獣の唸り声ような音を上げ、車体を振動させた。 「んじゃ、俺は死体を運びますから、先輩は引き続き調査を頼みます。モタモタしていると、スミスの旦那に怒鳴られますよ」 「その心配はない。すぐに方が尽くさ」 大柄の男はトラックを見送った後、一人農道を歩く。先まで行くと塀にたどり着いた。 「関所を越えている、可能性は少ないかもしれないな」 傍らにセキュリティロボットが近寄ってきた。通行許可証の提示を求めてきたので、自身のIDカードをロボットに見せる。すると、ロボットは何も見なかったように振り返り、辺りをぐるぐると動き回った。 「あいつが何か見ているかもしれないな」 男はロボットの背中にある装置にIDカードをかざし、数字を打ち込む。背中はぱっくりと口を開け、小型のコンピュータが顔を出した。 「さてと、誰かが通ったのなら記録が残っているはずだ。……これか」 男はすぐに気付いた。数時間ほど前、此処を通った人物を、確かにロボットが記憶していた。 「この区域のロボットにも、顔認識カメラでも取り付けておくべきかね。通行許可証の提示はないみたいだな、だとしたら」 男は近くに広がる藪に目をやった。 「彼処に逃げ込んだか、だとするといく場所は六番街。そこからカースト通りね」 胸ポケットから、仲間と連絡をする通信機を取り出した。 「此方オルドレイク。カースト通りから市街地に続く道を封鎖しろ、今すぐだ」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加