第1章 『審判』

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オルドレイクは茂みにはいると、懐から小瓶をとりだし、中に入っている液体を垂らした。液体は空中で丸の形を作り、次第に蛇の姿へと変わっていく。 「お呼びですかマスター?」 「この茂みに人間の痕跡がないか調べろ」 「承りました」 蛇は舌をチロチロと出して辺りを探り、軈て何かにすいよせられるように動き出した。オルドレイクはその後に付いていく。 「ここ、微かに人間の香りがしますね。雨の匂いも混じって、少し分かりにくいですが」 大きな木を見上げて蛇が言う。 「手をついたようですな。ここで休息をとったか、転んだかどちらかでしょう」 「転んだのだ」 オルドレイクは木の根本をみてそう言った。 「枯れ草が地面に強く埋もれている。雨で濡れた地面に足を滑らせたのだな」 辺りを見渡す。霧が立ち込めてきた、早いところ抜けた方がいいだろう。 「ここに来た事はわかった。カーミラ、戻っていいぞ」 「湿っぽくて快適だったのに」 カーミラは液体状に戻り、上昇する滝のように自らの意思で小瓶に入る。
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