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カースト通りに着いたエルを出迎えたのは、一人の青年だった。青年は警備員らしく、六番街から来たエルを不審に思っている。
「アンタ、何者ッスか?」
口を閉じ、下を向く。答えてしまっていけないと、誰かが言っているようで、名を名乗る事が出来ない。
「身分証明証とかあるッスか?あるなら出して欲しいッス」
これ以上黙っていたら、危うくなる。エルは持っていた学生証を見せた。
「ふーん、大学生か。って、ここ有名大学じゃないッスか!?なんでそのような大学生がここにいるッス!?怪しいッス!」
エルは怯え、後ずさりした。しかし、後ろはトラックが停められていて、逃げることができない。足下に鉄パイプが見えた、それを拾い上げようと、しゃがんだ時、他の人の声が聞こえる。
「おいアウター、何を騒いでいる」
「あっ、先輩。いや、彼処にいる女性怪しいッス!俺の目は誤魔化されないッス!」
「近眼がなにいってやがる」
その人物はエルに近づき、しげしげとエルを眺めた。
「……俺はフリングス。ここの警備を任せれている警備会社の者だ。政府から、住民を六番街へ行かぬよう見張れと言われている。しかし、君は六番街から来た。何故だ?」
「……道に、迷って」
「そういう事か、ならいい」
フリングスはエルへの警戒を解き、離れていった。
「ちょっと先輩、いいんっスか?」
「迷子なんてよくあることだ。それよりも、彼女を西口まで案内しろ、市街地へは一人で行けるだろう」
「わかりました」
アウターは、エルをトラックの助手席へ乗るよう促した。言われた通りトラックへと乗る。
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