第1章 『審判』

4/15
前へ
/15ページ
次へ
グレイルはエルを心配そうに見つめて、何も語り掛けて来ることはなかった。 どのくらい時間が経ったのだろう、エルがそう思った頃グレイルが動き出した。 突然動き出したグレイルに目がいく、その目は警戒心に満ちていた。 「そんな怖い目で見ないでくれよ、ただ、暖炉に薪をくべるだけさ」 グレイルは部屋の隅のおいてあった木片を暖炉へと放っていった。 「何故、こんな所に?此処は市街地から離れていて不便な土地だ。特に用があったとも思えない」 エルは口をつぐむ。 「事情があるのか、なら無理に聞こうとはしない。この頃、この街にも色々と不穏な影が立ち込めている。勿論、市街地ではないぞ?市街地では犯罪はおろか、事故も起きない。その外だよ。エル、廃棄児って知っているかい?」 グレイルの問いにエルは首を振った。 「知らないか、まぁ、市街地で育ったのなら知らないのが当たり前か。市街地の外は酷いもんだよ、荒れに荒れている。廃棄児っていうのは、捨てられた子供のことだ。育てるのが困難になったり、元々不要な存在である物を『クラッシャー』という大きな機械に捨てていく。『クラッシャー』はそんな子供たちを飲み込んで肉塊と変え、市街地で育てられている家畜の餌さとなる。市街地の家畜はとても品質がいいだろう?あれは、つまりそう言うことだ」 「そんな事、知らないほうが良かった」 エルが口を開いた。グレイルは興味を持ってくれたのが嬉しかったのか、話を続けた。 「市街地に住んでいる連中は、外の事なんかに関心がまるでない。外に住んでいる連中の事なんか、知らない振りさ。もし、なんかしらの接点を持って、少しでも間違いをおこしてしまうと、神の審判が下るからな。まっ、ここも一応は『アフトリア』内なのだがね」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加