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雨の音が止んできた。グレイルが窓を開けて外を見る。
「雨は止んだようだね」
「では、私は失礼します。これ以上、長居をするわけにはいかないので」
「外はもう暗い。泊まっていきなさい」
「いえ、そんな訳にはいけません」
エルは断ったが、グレイルが頑なに耳を傾けようとはしなかった。一点張りに「泊まっていけ」というだけだ。
グレイルのいう通りにして、一晩泊めてもらうことになった。明朝には出ていこう。そう考え、寝床へと案内される。
寝床は人一人が寝るくらいのスペースはあった。だが、あまり広くはない。
部屋の隅にあるランプに火がともされ、辺りを照らす。グレイルは「おやすみなさい」と一言だけいい、部屋を後にした。
横にあり、天井を眺める。塗装が剥がれていて、罅も入っている。
今日の光景がフラッシュバックして、エルの目に映る。父親を撃ち殺し、母親を刺殺し、兄の頭を吹き飛ばし、友の腕や心臓を抉った。
その感覚が今でも肌の裏側に残っているかのようだった。あれで正しい、自分は間違ったことはしていない。
かなり遠くの方で落雷の音が響いている。その音が、静かに迫り来る神の審判のように感じ、エルは耳を塞いだ。
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