第1章 『審判』

5/15
前へ
/15ページ
次へ
雨の音が止んできた。グレイルが窓を開けて外を見る。 「雨は止んだようだね」 「では、私は失礼します。これ以上、長居をするわけにはいかないので」 「外はもう暗い。泊まっていきなさい」 「いえ、そんな訳にはいけません」 エルは断ったが、グレイルが頑なに耳を傾けようとはしなかった。一点張りに「泊まっていけ」というだけだ。 グレイルのいう通りにして、一晩泊めてもらうことになった。明朝には出ていこう。そう考え、寝床へと案内される。 寝床は人一人が寝るくらいのスペースはあった。だが、あまり広くはない。 部屋の隅にあるランプに火がともされ、辺りを照らす。グレイルは「おやすみなさい」と一言だけいい、部屋を後にした。 横にあり、天井を眺める。塗装が剥がれていて、罅も入っている。 今日の光景がフラッシュバックして、エルの目に映る。父親を撃ち殺し、母親を刺殺し、兄の頭を吹き飛ばし、友の腕や心臓を抉った。 その感覚が今でも肌の裏側に残っているかのようだった。あれで正しい、自分は間違ったことはしていない。 かなり遠くの方で落雷の音が響いている。その音が、静かに迫り来る神の審判のように感じ、エルは耳を塞いだ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加