第1章 『審判』

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エルは腕を伸ばしてくるロボットを払い、その場から逃げ出した。ロボットは何やら警報を鳴らしているが、追ってくる事はなかった。 深い藪に逃げ込む。昨日の雨のせいか、地面はぬかるんでいる。地面から顔を出している木の根に足を掛け、転んでしまった。 自分の姿を見てみると、返り血で汚れている。先程のロボットにカメラが付いていたとしたら、その映像が監視塔などに転送されているだろう。 よろよろと立ち上がり、木に凭れ掛かる。身体が重い、このまま木と同化してしまうのではないかと言うほど、身体が木から離れようとしなかった。 もしかしたら神は既に自分の仕出かした罪を知っているかもしれない。歩かねば、逃げねば、私は殺される。 そう思ってエルは一歩一歩、重い足を引きずるように歩みを進めた。何処に付くかも分からない藪の中を。
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