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俺の右隣に座った奏。ふう、とため息なのか、深呼吸なのか。前を見てるから、俺からはやや斜め後ろ姿しか見えない。
後ろ手に手をつくように右手を俺の左側へ置いて…覗き込むように、俺を見た。右には奏、左には奏の手。もしかしなくても、ちょっと逃げられない感じに、手で跨がれてる?
「そんなの聞く必要、ある?」
「いや、その、え…っと、すみません」
だよね、そうだよね。結構愛してくれちゃってるもんね。だけど定期的に聞いたら、いつか答えが変わるんじゃないかなって思っちゃうんだよね!
それはその、あの、気持ちが離れるのが怖いから聞く女の子的な意味じゃなくて、そうじゃなくて…ただ気になっただけというか…。
何で気になるんだと言われれば、そりゃあもう…掘るか掘られるかの世界だから、としか言いようがないんだけども。
こんな時に限って『奏がいないと生きていけないくらい、愛してるんじゃないの』…なんて。拓海の言葉が頭をよぎるのは何故だ。
「まあ、確かに…そりゃ、奏はもう生活の一部的な?そんな…なんか、いないのは普通に寂しいよ?」
「愛の告白?」
「ち、違くて!」
一瞬でも、奏が死んだって思った時…すごく冷静になってたけど、あれは冷静なんじゃなくて、真っ白になってただけだなあ…とも、思ったよ?
でもそれとこれは…友情的なそれじゃないの?
いや、まあ。学校でキモイやつに襲われた時も…奏が神に見えたし…奏がいなきゃ無理だって…それは、その。自覚したけどさ。
き、キスされた時の事を想像しても、まんざらでもなかったよ?あれが裕翔だって一瞬でも想像したら、瞬殺でボコってる自覚もあるよ?
「奏…なら、大丈夫とか、そういう…?いや、違うだろ」
「何で百面相してんの」
あーもう。まとまらん。まとまらん!てかこのまとまらない考え、ずっとやってね?俺。何回もやってね?その度に答え出てなくね?
男?男か?男だからダメなのか?じゃあ、あれだ。奏をちょっと気の強い女の子だと思おう。クールビューティ系の。
…いける。可愛い。
じゃあ俺は?俺が女だったら?こんなイケメンで頼りがいのある彼氏どう?めっちゃ俺のこと好きで、絶対守ってくれる彼氏。
あーもう。最高かよ。
「やだやだ認めたくない!!分かってるけど、もう薄々分かっちゃってるけど認めたくない!!」
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