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「センパイ…僕ならセンパイを…」
「ん…?」
「いえ、なんでもありません…!センパイは、センパイの思う様にすればいいんです!誰かが不幸になるとか、そんなことよりも」
「うん、ありがとう。吉野くん」
「いえ!センパイの幸せを1番に願ってるのは僕ですから!」
吉野くんとの読み合わせも着々と進んでいき、立ち位置や仕草なんかも村上さんに指導されながら、なんとか終わった。
吉野くんのキャラはホント悲しい。
俺が男じゃなく、女だったとしたら…切ない恋だ。
好きな人に気持ちを伝える勇気が無くて、その好きな人には心揺らぐ相手が居て。
「吉野くんは好きな人とか居ないの?」
「もちろん市川センパイですよ!!」
「いや、役じゃなくて。そんなこと言わないで。怖い人が来るから…」
10分程度の休憩を挟むことになった。
吉野くんとの交流を深めたくて振った会話なのに、わざわざ奏に合わせて俺が好きって設定は持ち込まないでほしい。
ややこしくなるから…。
「伊織。いつからそんな関係になった…?」
ほら、来た。
「痛い痛い痛い…!違う!役作り!これは吉野くんの役作り…!痛い!離して!」
こいつ握力どんだけあるの…頭を鷲掴みにされただけでこんなに激痛走るなんておかしいよ…!
うぅ…なんて唸りながら頭を抑えてると、吉野くんが大丈夫ですか?って頭を撫でてくれた。
その手をパチン!って奏に叩かれたのは言うまでもない。
「伊織に気安く触れるな」
「……つかぬことをお伺いいたします!」
叩かれた手を摩りながら、吉野くんは大声で叫んだ。
え?なに?って思ってると
「役作り無しで、前田センパイは市川センパイのことが好きなんですか!?」
そう、叫んだ。
あまりの大声にシーンと静まり返った教室。
「そうだけど。悪い?」
この瞬間、俺の人生が終わったかもしれないと…目の前が真っ暗になりました。はい。
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